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tedazuma

我こそが滝川一益 少年期 その三




 久助は無造作にリンドウの花束を孫兵衛に渡し、いそいそと山に消えていった。


 次の朝の稽古には、小夜の顔が有った。すっかり回復した様子で稽古に励んでいる。だが小夜と久助の様子がちょっとおかしい、なぜかよそよそしい二人である。小夜の頬がほのかに赤く染まっている、久助も目線を合わせようとしない、はたから見れば喧嘩でもしているかに見える。

 それは忍びが相手に心を読まれてはいけないとの教えがあるからだ。二人がそれぞれ相手のことを特別に感じるのは事実だが、この感覚がなにかとはまだ知らぬ子供である。恥ずかしくさえ感じる自分の気持ちを隠し通そうと必死であった。忍びの道を歩みだしたとは言え、二人はまだ可愛いい忍びのヒヨ子だ。


  甲賀には数多く優秀な指導者がいる、各教授によって分野が違う。剣術、柔術、手裏剣術、火薬術、医術、妖術、馬術、など色々有り、その中でも上級忍者のみぞできる難しい伝達術が有る。それは現代の動画メールみたく、確実に記憶して伝えなくてはならない。声帯をも模写し、あたかも本人がいるかの様に、見て来たものをスクリーンやホノグラムに描かれたように伝える技である。


 久助がそんな難易度の高い技術などに挑みそして、体力的な能力を要する配達員の役目もしなければいけない。それには飛脚より早く体力も上回る足腰がなければ、敵陣より情報が遅れたら勝敗にも影響しかねぬ。その足腰の鍛錬の為、毎日甲賀の山々を駆け回って、己を極めていた。

 その隣にはいつも小夜がいた。


続く

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